オックスフォード通信(365/00)さらばオックスフォード!

ひとは何を目指して生きるのでしょう

オックスフォードではいろいろなことについて考える機会がありました。もちろん、よく生きること、社会に貢献できるような生き方をすることは重要だと思います。でもそれ以上にその人が生きがいを感じたり、楽しいと感じたりすることが生きている中にあることが重要だと思います。

と、ここまで書いてこれもまた少し違うようにも思います。オックスフォードの中心街のコーンマーケットでほぼ一日中、ギターの弾き語りをしている方がいます。大抵ボブディランの風に吹かれて(Blowin’ in the wind)を歌っています。なかなかいい声で歌詞が心に響きます。

この歌声を聞いていると何かを目指して生きて行くことが間違っているのかもしれないと思えてきます。目標とか考えすぎると大切なものをその過程で見逃してしまうのかもしれません。

イギリスでは自分の意図と関係なく多様な生き方を目にしてきたように思います。そのような中で、強く感じるのは日本人は本当は幸せであるはずだということです。変な言い方ですが、現在の経済・社会状況を世界的にみると日本はかなり好条件の恵まれている環境にあると思います。なのに、なぜか、幸福感が漂ってこない。

それは目標を立てすぎたり、人と比較をし過ぎたりしていることもあると思いますが、何よりも、間違ったこと、それが多少であってもそこに目が行きすぎて、多少の反対のよくできていることに目が向いていない事だと思います。ひと言でいうと、日本のいいところ、同僚のいいところ、友だちのいいところ、学生のいいところ、子どものいいところ、親のいいところを見ようとしてないところに問題があるのではないかと思うようになりました。

特にテレビの影響は甚大です。ゴシップ的な内容はイギリスではほぼ取り扱われることがありません。それを得意とする新聞をのぞけば新聞でもテレビでもゴシップネタは目にすることはありません。ゴシップとは極論すればスタンダードからの逸脱だと思います。日本はその逸脱の幅が極端に狭いようにも思います。それが窮屈に思ってしまう原因なのかもしれません。

よくグローバル社会とかグローバル化と言われますが、世界と比較して日本の優れたところをもっと互いに認め合い、そこに自信をもつことこそがそのひとつの方法ではないかと思います。

いよいよ本日、オックスフォードを離れます。Before Oxford (BO) とは異なる視点をもってAfter Oxford (AO) の日々を過ごしてみたいと思っています。

このブログもオックスフォード通信 1号からこの365号まで何とか続けることができました。これも皆様の温かいご声援のおかげと感謝しております。このブログを書きながら自分で発見することも多くありました。特に、ブログを書くことよって、1日1日を大切に過ごすことができたように思います。これをひと区切りとして更なる発展の道を探ってみたいと思います。引き続きご支援賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。

★今回の教訓:あらためてイギリスは奥深い国だと思う。と同時に英語も面白い研究分野であると改めて実感。

(2019.3.27)

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オックスフォード通信(364/01)研究の完成!

この1年間取り組んできた研究に一応の結論がでました

これほどひとつのことに時間をかけて取り組んだのは18年前の博士論文以来のことです。このような機会を頂いたことに感謝するとともにオックスフォード大学で共同研究者としてこの1年間、一緒に議論を重ねて下さったR先生に感謝してもしきれない想いです。

数えてみると本日のミーティングでこの1年間17回もミーティングを重ねたことになります。博士課程学生の指導やご自身の授業や学内業務で超多忙であるにも関わらず、いつも真剣かつ誠実に建設的な議論をして下さったことを幸せに思います。特に、誰に対してもフェアかつ共感的態度をもって接しておられる姿からは、私よりも年は一回り以上お若いですが、研究の中身以上に多くのことを学ばさせて頂いたと感謝しています。

研究にひと区切りが付くと、不思議なものでオックスフォードの街並みがより一層美しく迫ってくるように思いました。今日は天気も良く、春が近づいたと思えるようなポカポカ陽気でした。

帰国すると多くの仕事が待っているようです。しかし目には見えませんが大きなお土産を持って帰ることができるように思います。

豊かな知的空間であるからこそこのように研究を楽しく進めることができたのかもしれません。今度はそのような場を日本や同志社女子大学に小規模でも構築する努力をすることが私の責務だと思っています。ただあまり気負うと大抵失敗するので、1mmくらい積み上げるくらいの軽い気持ちでやってみたいと思います。

★今回の教訓:研究が線路の一本とするともう一本は、i-Seminarであったことはもちろんだ。若ゼミ18期生の真摯に学ぶすがたがあったからこそ私も研究を頑張ろうと思えた。まさに教えながら学び、学びながら教えるということだろう。

(2019.3.26)

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オックスフォード通信(363/02)Bodleian Libraries

今回のオックスフォード大学での在外研究で一番多くの時間を過ごしたのがこのボードリアン図書館です

ボードリアン図書館とはオックスフォード大学のほぼすべてのカレッジや学部にある図書館と中メインの図書館の総称です。所属していた教育学部の図書館にも随分とお世話になったのですが、特にOld LibraryとRadcliffe Cameraは多くのインスピレーションが沸いてきた場所でした。

Old Libraryにはハリーポッターの映画にも出てくるDuke Humfrey’s Reading Roomと言われる閲覧室があり主に人文系の歴史的なレファレレンスが並んでいます。ボードリアン図書館ツアーでも回るコースになっているのですが、私は最初、ここには特別の許可がないと入ることができないと思い込んでいていつも羨望の眼差しで見ていたのですが、この図書館で働いておられる日本人のMさんがたまたま受付(監視係?)をしておられる時に伺うと、私も閲覧室に入る資格があるとのことでそれからは何度も入らせて頂き、じっくりと思索させて頂くことができました。

ただ、このDuke Humfrey’s Reading Roomは特別な場所で、もともとボードリアン図書館内は全ての写真撮影は禁止なのですが、特にここは厳しい場所です。一度、あまり知らずにここを通りかかって写真を撮ったところ係員から厳しく注意を受け、写真の削除をさせられたこともありました(知りませんでした・すいません)。

またこの閲覧室に入るには(となりのWeston図書館も同様ですが)、持ち込む荷物を透明の袋に入れ替えそれ以外のカバンなどはロッカーに預けないと入ることが許可されません。ラップトップのケースも不可でコンピュータを取り出した状態でないとだめです。これは盗難防止のためだと思いますが、ロンドンの大英図書館のReading Roomも同様の措置がとられています。

しかし、このDuke Humfrey’s Reading Roomは素晴らしい場所です。ほどよく薄暗く、回りを多くの偉大な先人の絵が取り囲みます。この場にいると自分が歴史的にはほんの短い時間を生きていることを実感するとともに、知が歴史的につながっていることを感じます。

誰も物音を立てることもなく静かに豊かな時間が流れていきます。

同様のことはこのOld LibraryとGladstone Linkというトンネルでつながっているラドクリフカメラも同様です。外から見ると素晴らしい景観ですが、内部は更に一層、知の殿堂・知が産まれる所という感じがします。写真を撮ることが許されていないのでお見せできないのが残念ですが、この場で構想を練ると質の異なるアイディアが浮かんでくるのが不思議です。

入場にも退場にもIDカードでチェックをする厳重さですが、その面倒くささを乗り越えた先には豊かな空間が広がっています。日本でもこのような場所を探したいと思います。

★今回の教訓:図書館のありがたみを実感したこの1年間。日本でも図書館をもっと有効に使いたい。

(2019.3.25)

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オックスフォード通信(361/04)Spring Equinox

春分の日を過ぎました

いよいよ昼の時間の方が長くなります。最近では朝は6時前に白々と明るくなり、夕方も午後6時を回ってもまだ明るい状況です。2月下旬のボカボカ陽気には全然及びませんが、それでもマグノリアの花は満開ですし、イギリスの桜も咲いているところが多く見うけられます。

イギリスのように一番暗い時期には夕刻は午後3時台に日没という時期がありましたので、日が長くなることだけで何か幸せな気持ちになります。日本ではこれほど極端に昼と夜の長さが変化することはありません。これは高緯度地方独特のものだと思います。

何もしなくても日が長くなるだけで幸せな気持ちになれるというのは何か得したような感じもするのですが、それだけ冬の暗さは言葉に言い表せません。昨年4月に私来た際、9月から来ておられたT大学の先生が、冬は辛いですよ、としみじみ言っておられたことを思い出します。日本でも桜が咲くと一気に気分が高揚するのとよく似ています。ただ、日本の場合にはその気持ちは一時的なものですが、イギリスでは秋まで続く点は相違点かもしれません(その分、冬の反動は大きいですが)。

落差が激しいとそれだけ大きな感情の起伏を生み、そこから新しい文学や音楽が生まれてくるのかもしれません。

いずれにせよ、暗闇を通り越した喜びは大きいです。

いよいよ帰国の時期が迫ってきました。

★今回の教訓:帰国を前にして取り組んできた研究のまとめも佳境。仕上げて帰りたい。

(2019.3.23)

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オックスフォード通信(358/07)Enlightment

認知言語学者として著名なスティーブン・ピンカー教授の講演会に行ってきました

スティーブン・ピンカーはハーバード大学教授でノームチョムスキーの後継者と目されている著名言語学者ですが、近著は「悟り」とも訳せる、Enlightment というタイトルの本です。たまたまBlackwell(書店)で事前に本を買っていたのでパラパラと見ていたのですが、トピックは多岐に渡り、時代も過去200-300年と遡りながら統計的データを元にして論じています。

簡単に言うと、時代と共に、人類は進化しているし、幸せになっているというものです。

講演会とは銘打ってありますが、オックスフォード大学の教授が聞き役になり、その質問にピンカー教授が答えてゆくというものでした。

人類が進化しているという点については、質疑応答のコーナーで、シリア出身という男性がそのように思えないと述べていましたが、個々人や個々の国と人類全体というレベルで議論するとその結論は異なってくるのかもしれません。

それ以上にピンカー教授が言語学からこのような、何とまとめるとよいか分からない領域に足を踏み出していることに興味を覚えます。チョムスキーが政治の領域で多くの議論をしていることとよく似ています。恐らく、これまでの領域では自分の研究課題を全て解決してしまったということなんでしょう。応用言語学者のドルネイが近年、神学で博士号を取得したこともよく似た話に8なるかもしれません。

いずれにせよ、個々人や個々の地域や国というレベルで考えるとなかなか人類の進化を実感できないのですが、統計が間違っていないとしても、また統計データの読み方が適切であるとしても、昔では考えることのできなかった悲惨な事件が多く起きていることはどう読み解けばいいのでしょう。

恐らくそれらを表す指標自体がまだないのかもしれません。また比較の対象を巨視的だけでなく近視眼的にすることも必要なんでしょう。

ただピンカー教授が主張するように、人類は悲惨な戦争や事件を乗り越えながらも、全体として進化しようとしているのは事実だと思います。それは教育の効果、インターネットによる情報の瞬時による伝達ということもありますが、根源的にはそれぞれよりよい生活を目指して努力するヒトという動物の中に埋め込まれたDNAのせいかもしれません。

教育の役割は?個々人の努力の必要は?神の存在は?などいろいろな点についていいヒントを得たと思います。

★今回の教訓:講演会のあと、サイン会があった。あれだけの世界的に著名な学者でありながら気さくにサインに応じているところに人間的魅力をみるけることができる。もちろん、並ばさせて頂きました。

(2019.3.20)

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オックスフォード通信(354/11)バベル展とイギリスのパスポート

オックスフォード大学ウェストンライブラリーでバベル展が開催されています

昨年の夏にウイーンでバベルの絵画をみる機会がありましたが、オックスフォードでたまたまバベルについての展覧会があるなど縁を感じます。

バベルとは天に届くような塔を作ろうとしたがそれに怒った神が皆が協力できないようにするために人々が話す言葉を異なる言語に分け隔てるようにしたといわれた塔です。この展示会もバベルに象徴されるように、多言語と相互の翻訳の世界を描いています。

展示会ではバベルの塔の挿絵や例えばイソップ物語がどのような言語からどの言語に翻訳されてきたかなどが分かりやすく展示されていました。中にはピーターラビットもイソップのひとつとして置いてありました。

特におもしろかったのは、SuperDry。こればビールではなくて(ビールから触発されたといわれています)衣料品のブランドです。わざとぎこちなく直訳して「極度乾燥しなさい」と日本語が沿えてあります。意訳ではなくて直訳してあるところに興味を惹かれるところです。

もう一つはイギリスのパスポート。1988年までのものにはBritish PassortとBritishという言葉が全面に大きく書いてあります。一方それ以降のものにはEuropean Unionという文字が。説明書きにもありましたがBrexit後、このパスポートの表記の行方も気になるところです。種類は異なるかもしれませんが、日本の新元号によって運転免許証の表記が変更になることと何か共通するものを感じました。

ことばによって何かのアイディアやアイデンティティーが伝わってきます。翻訳によってその部分が伝わるかどうかは微妙な所です。

バベルー言葉ー翻訳ーアイデンティティー、この線上にあるものは人間の根幹に関わる事項なのかもしれません。

★今回の教訓:もし全世界が同じ言葉を使っていたらどのような世界になっていただろう。ひょっとしたら宗教も同一になっていたかもしれない。

(2019.3.16)

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オックスフォード通信(345/20)イギリス英語

こちらに来てあまりイギリス英語とアメリカ英語の違いに注目してきませんでした

それはオックスフォード大学が世界中から学生・院生・研究者・先生が集まっているので、スペリングで例えば、realizeをrelise、centerがcentreと表記されるような特徴的な事以外には気が取られることがありませんでした。

アシュモリアン美術館勤務のPさんと今日話をしていて語彙の微妙な違いが面白いと思いました。書き記すような事でもないのですが、よく俗語で使われるassというのはイギリス英語ではロバという意味で人を馬鹿にする(その点では同じですが)時に使われ、通常のお尻という意味ではないとのこと。一方、その意味では、arse という言葉を使うとのこと。話がややこしいですがここまでくると単なる表記の問題でもないようです。

オックスフォードのバスにのるとMetroというフリーペーパー(ロンドンと共通)をもらうことが出来ます。中にはひと言ありがとう (Good Deed Feed)とか偶然会ったあの人に(Rush-Hour Crush)などの投稿のコーナーがあって面白い新聞です(このような新聞を授業で使うと面白いと思うのですが)。これが毎日発行されているのがすごいと思います(それだけのいい行いと偶然の出会いがあるのですね)。今日のその記事に、ロンドンの地下鉄でGospel Oak駅とBarking駅の間のOverground service路線についての記事がありました。Pさんに言わせると昔は、Underground (=tube; 地下鉄)に対して地上を走る電車は全てOvergroundと言っていたそうですが、現在では地下鉄なのに全路線地上を走る特定の路線のことをOvergroundと呼ぶそうです(私はピカデリーラインのようにヒースロー空港近くになると地上を走る部分のことかと誤解していました)。

アメリカ英語に慣れているとイギリス英語は分かりにくいと思うのですが、このようなunderground=overgroundなどの例にあるように(最も昔の意味の場合ですが)イギリスの方が分かりやすいことがあります。

発音についても、can = can’t は圧倒的にイギリス英語の方が発音しやすいです。canをアメリカ英語的に発音するとcan’tといっているように聞こえることがありますが、イギリス英語の、カン (can)、カーント (can’t) と発音すると誤解されることはありません。

国際語としての英語を使う場合には、「通じることを前提」にイギリス英語+アメリカ英語+カナダ英語+ニュージーランド英語+オーストラリア英語の日本人に使いやすいところを取捨選択することもあり得ると思います。すると、日本人が美徳とするような「美しい英語」という幻想からも脱出する事が可能となるかもしれません。

明日からヴェニチアを旅してきます。

★今回の教訓:そろそろジャパニーズイングリッシュという蔑視ではなく、Nippon英語というジャンルを確立してゆく時期かもしれない。Nippon English なかなかいい呼称かもしれない。

(2019.3.7)

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オックスフォード通信(329/36)Trinity College

ダブリンの中心部にあるのがトリニティーカレッジです

本日はここである用事をさせていただきました。Corkというアイルランドの南部のUCC (University College Cork) のC先生、トリニティーカレッジのJ先生と一緒です。朝の8時にホテルでC先生と待ち合わせて、J先生のオフィスへ。お昼ご飯を含めると午後2時半くらいまでですから半日以上、いろいろなお話をさせて頂きながら用事を済まさせて頂きました。

今回のアイルランド訪問の目的がこの用事だったので、いい形で済ませることができて達成感につつまれる幸せを味わうことが出来ました。それ以上にトリニティーカレッジの大学院生のNさんの割れんばかりの笑顔を見ることができて嬉しい気持ちになりました。

J先生いわくトリニティーカレッジはケンブリッジのようなカレッジを沢山作ってUniversityを形成する予定だったのが、ひとつに終わってしまったので、Trinity College, The Univerity of DublinとUniversityも付けたとのこと。

学期中ということもあるのですが、オックスフォードと異なりひとつのキャンパスに全学生が集まっているので学生で賑わっているという感じの活気のある雰囲気でした。またラップトップであちらこちらで思い思いに研究している学生のすがたを目の当たりにしました。そんなに行儀がいいわけではないのですが、これぞアカデミックという感じです。

お昼は大学専任教員(フェロー)専用の食堂でランチ(本日のスープ、ベークド・サーモン、ブリュレ、白ワイン)を頂いたのですが、内部は豪華な作りで本格的レストランという雰囲気です。サーモンはこれまで見た中で最大級の大きさ。面白いのはC先生やJ先生は話をしている時はもちろん食べないのですが、ターンテーキングで話が他に移ると猛烈なスピードで食べるところです。例えば、C先生は私と同じサーモンだったのですが、先ほどまで私の方が沢山食べていたのですが(そうやってカウントできるほど大きいサーモン!)私が話をしている時に一気に食べたのか、気がつくと、抜かされていました。緩急の付け方がうまい。

話をするときと食べるとき、それぞれ集中して事にあたる感じです。

話が戻りますが、活気のある大学はいいとおもいます。日本のように化粧したり綺麗な服を着飾ったりしている女子大学生の数は少ないですが、それぞれが生き生きとしているのでとても魅力的に見えます。男子学生も同じです。ひと言で言うと、大学生活に夢中になって取り組んでいる、また取り組むことがあるということです。服装や化粧を気にすることと大学生活に夢中になることはトレードオフ(Trade-Off)の関係にあるのでしょうか。

夕方は、有名なThe Temple Barでギネスをもう一杯とオイスターを半ダース頂き、帰路に就きました(折角、3日間有効のリープカードを買ったのに、空港行きの700系統のバスが来ない!諦めて757を待っていたら、あと3mi=>2min=>1min=>dueとなってさあ、と思っても来ない。しばらくすると電光掲示板から757の数字が消えた。えええ、と思って暫く待ったものの飛行機に乗り遅れては・・・と思いタクシーに。ところがタクシーに乗っていると、バス専用レーンを後から走ってきた757系統のバスに抜かされていました。アイルランドは大好きですが、交通機関関係はイギリス同様、あまり好きになれません)。

帰りのヒースロー空港では、ようし、パスポートにBRP (Biometric residence permits) を出す気満々で到着したのですが、あろうことか、BRPどころかパスポートコントロールもない始末。準備がなかなか報われません。

★今回の教訓:達成感は生きがいに重要。活気も大学に必要。

(2019.2.19)

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オックスフォード通信(327/38)Going to Ireland

 アイルランド・ダブリンに来ています

折角なので(これが大事)ダブリンの観光もしてみようと1日早く到着(といっても、日曜日の朝6時半に家を出発してヒースロー空港ターミナル5に到着したのは8時半(毎時30分おきに出ている直通バスがとても便利です)、飛行機に乗ったのが10時50分(ブリティッシュエアウェイズだったのですが、一番後の席で、しかも通路側と真ん中の座席。席を選択しようとしたr £24と法外な値段だったのでそのままに。変えなくてよかったです。何と一番後の座席の窓側は窓がない!その関係で飛行機が離陸したのも着陸したのも振動とアナウンスだけで知る始末。遊園地で暗闇でジェットコースターに乗っているようなもの。いま一歩、飛行機でアイルランドに来たという感じがしません)、3日間乗り放題のチケットでバスでダブリン市内に入り、ホテルに到着したのが午後2時と、やはりイギリスとアイルランドは近い!と思います。

共同研究をしているオックスフォード大のR先生は、飛行機が上がったと思ったらすぐに下がるとおっしゃっておられましたがその通り(といっても、上記の影響で上昇も下降もあまり分からず仕舞い)。

アイルランドの第一印象は、みんなとても親切で誠実と言えると思います。空港のインフォメーションもホテルのフロントも丁寧に対応してくれます。ホテルもこれまで泊まった中で最も高級という部類に入るかもしれません。晩ご飯を兼ねて行ったアイリッシュダンスのショーも、イギリスだったらとつい思ってしまうのですが、比較すると支出が少なく済む一方満足度は2倍くらいあります。

誠実・堅実と言ったらいいでしょうか。R先生にも詳しくダブリンの情報を教えてもらったのですが、17期生のYさんが以前約1年間ダブリンに住んでおられたので事細かく観光スポットやカフェ、晩ご飯の場所をLINEで送って頂いたのがとても参考になっています。

まずお薦めに従い、ギネスストアハウスへ。あのビールのギネスを作っている工場の直営店です。ダブリンのギネスは他とは違うよ・・・聞く人聞く人そう言われたとおり、最上階の6F(=7階)のバーにまず直行して(すいません、説明を全て省いてまず一番上に行きました)360度の眺望を楽しもうとしながら(実際は人が多すぎて景色は一望とはなりませんでした)、入れて頂いたギネスを飲んだのですが、まずてっぺんの泡のきめ細やかさにビックリ。これは明らかにこれまで飲んできたギネスとは違う。そして味もよりこなれた味わいのように感じました(こちらは正直微妙な感じ・それほど私の舌は敏感でないのかも)。ここでもカメラを持っていたら、頼まなくてもスタッフが写真を撮りましょうかと言って親切にしかも上手に撮ってくれる。もうこれだけでダブリンのファンになりました。

街の中心部をながれているLIffey(リフェイ)川には綺麗な水が流れています。アイルランドの首都といってもオックスフォードくらいの感じでバスにも乗っていますが、歩いてでも回れるくらいの規模の街です。

そして夜のアイリッシュダンスのショーでケルトのアイルランドの虜になった感じです。今晩のアイルランドの音楽は、ギターとバンジョーにボーカルという編成なのですが、MC兼ボーカルが何度も言っていましたが、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど多くの英語圏の文化はアイルランドから人と一緒に移動したもの又はその影響を強く受けている可能性を強く感じました。音楽しかり言葉しかりです。アメリカのケネディ家に見られるようにアイルランドから何百万という単位でアメリカに移住していますし、移住した後もアイルランドの文化をその場で継承しているケースが多く見うけられます。アイルランドが英語圏文化の核であると言うといい言い過ぎかもしれませんが、それくらい大きなインパクトを与えてきたことはそれほど多くの人が認知してこなかったと思います(私もそうです)。特に音楽はそのままアメリカなどに輸出されてそれがブルーグラスなどとして発展したといってもいいかもしれません。

言葉も面白いところです。アイルランドではCrack (Craic)は挨拶に使われるそうです。通常はよく知られた意味として「ひび割れ」という意味が用いられますが、アイルランドでは、”What is the crack?” で “How’s it going?”(元気)という意味になるそうです。印象としてはアイルランド語(又はゲール語)が話せる人はそれほど多くないようですが、アイルランド語やアイルランドの英語が他の国の英語と微妙に食い違っているのも興味深い点です。

アイルランドは世界各国の英語を母語とする国の原点のひとつであることは間違いないと思います。もう少しアイルランドについて考えてみたいと思います。

★今回の教訓:特に世界で話されている英語とアイルランドの関係は興味深い。

(2019.2.17)

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オックスフォード通信(326/39)iPadの講習会

iPadなんて使い方は知っているはず

と思っていたのですが、ITサービスセンターが手厚く無料で講習会を開くというので1時間のワークショップに参加してきました。

といっても直前だったので、キャンセル待ちという形でしたが、とりあえず朝9時15分からのスタートに間に合うように行ってみました。少し寒い朝でしたので予想どおり5名がまだ来ていないとのこと。来なければウエイティングリストに乗っている私を(本当はキャンセルがあれば連絡が来るようで連絡が来ないウエイティングリストはダメだそうです)入れてくれるとのこと。最初は5分待ってということだったのですが、公式には15分の遅刻までは許されているようで、10分経ったころに、どうぞという話になりました。

ITサービスセンターはスキル習得の殿堂のようなところで、コンピュータを中心にありとあらゆるスキルのワークショップを行っています(以前にも書きましたがここがオックスフォードの世界一たる理由のひとつになっていると思います。だって、博士号を持ったインストラクターが専門に教えている訳ですから。ポスドクではないような気がします)。

さて、あまり期待をせず(すいません)座っているといくつもの目からウロコの部分が。特に、インプットとアウトプットに音声入力・出力がデフォルトの状態でかなり自然にできることにビックリしました。

これまで文字を打つのはiPadではイヤだなと思っていたのですが、キーボード入力ではなくて、音声入力をするのが現在では正解なのかもしれません。もっとも日本語は漢字変換があるので英語ほどスムースではないかもしれませんんが、かなり入力のストレスが軽減されると思います。

またWebの情報を読むよりは読み上げてもらうとより楽になります。この読み上げもコンピュータ色のある声ではありますが、難しい設定をしなくてもスラスラ読んでくれるのにビックリしました。以前なら専用のAppをインストールする必要がありました。

また一番ビックリしたのがカメラです。iPadのカメラは馬鹿にしているところがあったのですが、スキャンするのに丁度いいのかもしれません。講師のインストラクターは友だちが作ってくれたと言って、専用のスキャン台を見せてくれました。その下に本や雑誌を入れるとうまくスキャンができます。その後、Immersive Readerで読み上げるという連携プレーです。ストラテジーでも「連携=組み合わせ(というかその場に適したものを選択する)る」ことが肝要と言われていますが、Appもこの組み合わせはとても効率がいいと思います。

直感的に自分なりに使えるところがiPadをはじめアップル製品のいいところですが、効果的な使い方については誰かに教えてもらわないといつまでも上達しないと悟るところがありました。

★今回の教訓:その他にもホームキーを3回押すと出てくる拡大鏡(設定=>アクセシビリティー)もなかなか。時々、自分の知識とスキルの棚卸しが必要だ。

(2019.2.16)

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オックスフォード通信(322/43)Turnitup

ITサービスセンターが主宰の剽窃(Plagiarism)についてのワークショップに参加してきました。

Plagiarismは日本だけでなく、イギリス、アメリカどこの国でも大きな問題になっています。特に、アカデミックな世界では、学生が(まあ、教員も問題になっていますが)書いたレポートがどれだけオリジナルかというのは、インターネット(情報の共有)やデジタル化(情報のコピー)が発展する中で大きな問題になっています。

オックスフォードでは、Turnitup というソフトを導入してるそうでその使い方と効用についてのワークショップでした。実際に、私も本年度のゼミメンバー(18期生)が書いた卒論で試してみましたが、その威力はすごいと思いました。最初、間違えて日本語の文書を入れてしまったのですが、その場合でも日本語の論文データベースと照合してどれほど引用されているかと%で表示してくれます。

もちろん、剽窃と言っても、きちんとした手法を取っていれば(引用、文献の明示)問題ないのですが、本文中の文章がどれだけ本人によって書かれているかが分かるのが面白い所です。

J先生はワークショップ後も使える設定にしておいてくれた関係で、17名全員の卒論をチェックすることができました。25%未満であれば、全く問題なしということですが、7%~16%の間で全員収まっていました(安堵)。と同時に卒論の単語数も自動的にカウントしてくれるのですが、平均で9650 wordsも書いていることにビックリしました。これは表紙からレファレンス、アペンディックスまで全て含んでの単語数ですが、3000 words以上という条件を3倍以上オーバーしていることに改めて衝撃を受けました。よく頑張ったのですね(卒論の個々の評価は卒業式で、卒論と一緒にお返しします)。

ちなみにこのTurnitupは大学など学校単位でないと契約できない仕組みになっているようです。日本では関学が加入しているようです。

★今回の教訓:レポート評価でインターネットからコピーしたかどうかなどよく大学でも問題になるが、「・・・と思う」ではなくて「・・%」と数値で明示しなくてはこれからは学生を納得させられないのではないか、と思う。

(2019.2.12)

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オックスフォード通信(316/49)オックスフォードでの研究

オックスフォードでの研究は主として図書館で行っています

ボードリアン図書館にはいろいろな場所があります。もちろん教育学部の図書館もいいです。検索しても結局、必要な本は教育学部にあることが多いです。Noham Roadに面したReading Roomは集中して静かにものを考えるのにはいいところです。

自然史博物館の横にあるボードリアン図書館の分館もいい感じです。理系の本が並んでいますが、机が大きくて雄大にものを考えることができます。

ただ何といっても一番、落ち着くのはボードリアン図書館のラドクリフカメラです。オックスフォードのランドマークにもなっていて、観光客が回りを取り囲んでいますが、中は話し声ひとつ聞こえない真剣なムードが漂っていて何かいいアイディアが浮かんできそうな気に、いつもなります。

上階の1F, 2Fもいいのですが、地上階の薄暗い雰囲気がとても気に入っています。少し暗い方が集中できます。ほぼいつも満員ですが、少し探すとどこかに空いている席があります。ただ、最大の難点はWifiが弱いことです。オックスフォード全体でWifiの電波は弱いのですが、このラドクリフカメラは石造りのせいか、電波が届きにくいのか内部でうまく伝わらないのか分かりませんが良く途切れます。

明日もラドクリフカメラの予定です。

★今回の教訓:集中できる場所をいくつか持っておくことは重要。

(2019.2.6)

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オックスフォード通信(308/57)大学院生の指導

R先生の共同研究も随分大詰めです

こちらでは授業を教えたり・授業に参加する義務がないだけに、R先生との共同研究を軸にオックスフォードでの研究生活を構築しています。来月にはアイルランド・トリニティーカレッジに行く用事もあるためその準備もしなければならないのですが、R先生と話をする度にいろいろなインスピレーションが湧いてくるのが面白いところです。

R先生は9名の博士課程学生をかかえているため、その指導が大変です。スケジュールを見せて頂くことがあるのですが、Google Calendarで管理された予定はぎっしりです。ほぼ1時間ずつ院生と向き合っておられます。もちろんオックスフォードの大学院生は優秀ではありますが、だからといって放っておいていい論文が書ける訳ではありません。オックスフォードでの在外研究のアジェンダには入っていなかったのですが、教員の学生に対する態度にも大いに教えられるところがあります。このような丁寧な指導がいい研究者やいい論文を産むのだと思います。地道な指導に優るものはないと思います。

★今回の教訓:学生の指導は丁寧すぎず放任しし過ぎない適度な距離感が重要だ。その中核にあるのはもちろん知的な刺激であることはいうまでもない。

(2019.1.29)

オックスフォード通信(260)Sleepingについての最新研究セミナー

Sleepingについての最新研究セミナーに参加してきました。特に、睡眠と意識の関係についてのお話でした。会場が溢れるくらいの参加者でイギリスでもこの睡眠が大きな関心を呼んでいることと伺わせます。レム睡眠とノンレム睡眠と夢の関係、Consciousness vs Unconsciousness、Executive vs Sensory disconnectionなど具体的な研究データを通しての講演でした。結論として睡眠中に意識があるのはホットゾーンにおけるデルタパワーの減少とガンマの増大が理由であるとのこと。

(2018.12.12)

★今回の教訓:睡眠はどこの国でも興味が高いトピックだ。でもこのように実証的データで提示するのには説得力がある。

オックスフォード通信(255)マイクロソフト

スタンフォード大学の教員でマイクロソフト勤務のGさんのセミナーに参加してきました。Vickrey–Clarke–Groves (VCG) mechanismについての研究発表。社会問題を最適に解決するための方法論についての議論でした。Social transformationを実現するためにはVCGだけでは不十分である。その理由がいくつか述べられていました。例えば、Budget risk; Communication complexity; Computational complexityなど。そして思想的にも浅いと。

なかなか手厳しい批判ですが、社会変革を目指すなら、Usual approachではなくより高いスキルと協働作業が必要であること、そして適切なデザインを考案することが大切だと述べておられました。1時間余りの講演でしたが、特に「新たなフレームワーク」とそれに見合った「スキル」が重要であると感じました。

(2018.12.7)

★今回の教訓:オックスフォードのセミナーは、大学全域で行われるのでいろいろな場所に行けて楽しい半面、探し出すのが大変だ。

オックスフォード通信(253)ABDABRACADABRA

本日の実験心理学セミナーは自閉症児 (autism) の読解能力についてのお話でした。シドニー大学のA先生の報告は刺激的な内容を含んでいます。L1(英語)についての研究ですが、ESL/EFLにも当てはまる所が多くあるように思います。当たり前のようですが、①理解力はコンテクストの理解に依存する、②正確な理解が理解力につながる。

個人で教える際と教室で教える場合には異なったアプローチが必要であるという結論も納得のいくところです。CAIを使った読解力養成興味深いものがあります。実証的に丁寧に証明をしてゆくことが重要であるとあらためて感じます。不思議ですが、優れた研究ほど研究デザインはシンプルです。

(2018.12.5)

★今回の教訓:当たり前のようなことをきちんと検証することが重要。

オックスフォード通信(249)Stats

今週はデータ分析方法と統計について深く考える一週間となりました。オックスフォードには(有料ですが)学生・大学院生・研究者・教職員・一般を対象に数々のワークシップが提供されています。今週は質的データ分析のためのソフトウエアとして有名なNvivoの1日ワークショップに2日連続(1日目は基本、2日目は追うよう)に参加してきました。1日といっても朝9時半から5時までみっちりと、大学の授業に換算すると90分、4コマ換算の集中度です。

参加人数は20名弱。オックスフォードは授業週が少ない分、このようなワークショップが年間を通して提供されているのが興味深いところです。実はこのNvivoのワークショップは春にも一度開催されていたのですが、申し込もうとおもったところ既に満員で申し込みを締め切っていましたので、満を持しての参加となりました。

インストラクターは何人もがリレー形式で、自分の得意な分野を教えるという形式です。私の横にいたNickはオックスフォード大学の病院勤務の職員だと言っていました。確かに病院では患者さんのアンケート(自由記述)を分析する必要がありますね。これが終わったら、ユーロスターで今晩はパリだと言っていたのが印象的です。

私も講師の巧みな教え方といいムードのワークショップのお陰で、Nvivoが最初から最後まで使えるようになりました。あとは忘れないように実際の研究を続けることですね。

(2018.12.1)

★今回の教訓:ワークショップスタイルはすぐその場で身につくので効果的な教育方法だ。

オックスフォード通信(239)バイリンガルキッズと双子

二日連続で興味深いセミナーに参加してきました

ポーランド語と英語のバイリンガルの双子(LIとTD、二卵性:dizygotic)を対象としてコミュニケーション能力の発達を縦断的に研究した博士論文を元にした発表でした。二卵性ということもありますが、BiとTDの2言語の発達が異なっていること(主としてTDが上回っている)をベースにしながら、LIが時間の経過とともにどのように二言語を発達させてきたのかについて報告されていました。

質問にもあったのですが、このような子どもを研究対象として見つけることはなかなか難しいことですが、その幸運も研究成果のひとつだと思います。またこの発表の中で、力説された「コミュニケーション能力とは何か」という点には興味を覚えました。

Dynamic Model of Communicative Abilityと称されるモデルでは、従来型のLinguistic, Discourse, Sociocultural, Strategicの4つの要素に加え、Monitoring, Interactionalという2つの新たな構成要素も含めそれらが相互に関連し合っているというものです。

その背景には、近年注目されているComplex Dynamic Systems Theoryがあります。バタフライ・イフェクトに象徴されるように、時間の経過とともに言語発達は混沌とした姿を見せます。一方、スタート時の影響や環境との相互作用も議論に含まれます。

この発表を聞きながら、言語発達は一様に何かの影響であると断言するよりも多様な要因の相互作用によって生まれてくるものだというその総合性に目を向ける必要があると思いました。一方、そうはいいながらも複雑な言語発達をある一定の視点や構成要素によって分析的に検討する必要性もあると思います。

二卵性双子という場合、遺伝子としては50%の共通性しかないわけですので、言語発達への遺伝的要因の影響は無視できません。しかし、同じ親であるため、SES (Socioeconomic Status)は同じであり、言語環境もほぼ同一のものが用意されます。複雑な要因のかなりの部分が統制できるところが双子研究の面白いところかもしれません。特にコミュニケーション能力の発達には、周囲の大人(家族、親戚)とのインターラクションが影響してくることを考えると環境をコントロールして研究を行うことは重要です。双子という偶然出現したこどもによって言語発達の秘密に光があてられることは興味深いところです。

(2018.11.21)

★今回の教訓:私の子ども達も双子。この研究対象の二人と同様二卵性であり、同様にその能力の相似性と相違性が見られる。

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オックスフォード通信(233)バイリンガルキッズに必要な年数

オックスフォード通信(233)バイリンガルキッズに必要な年数

ESL環境における子ども達の英語能力の発達についてのセミナーに参加してきました

応用言語学の中でもピンポイントのセミナーはなかなかないのですが、月曜日夕刻の教育学部のセミナーはLeeds大学のC先生のまさに聞きたいお話でした。

多様な第一言語 (Home Language) を母語とする子ども達を対象にした大規模な調査研究で、英語能力もSentence Repetitionなど多くのテストを活用しながら、第二言語としての英語の発達に寄与するのは何なのかという壮大なResearch Questionに答える興味深い研究内容でした。

結果として、どれだけ英語を話したかということは英語能力を占う結果にはなりませんでした。英語を早く習得させるために自宅でHome Languageを使うのを控え英語を使うようにしがちだと思いますが、それは関係ナイトの結果でした。では、何が英語能力の発達に寄与するかというと、それは累積的にどれだけ英語に触れたのか(exposure)その期間ということでした。実にそれは42 monthsということですので、3年半ということになります。

アメリカの応用言語学者クラッシェンが提唱した有名なインプット仮説がありますが、まさにその仮説に沿う結果と言ってもいいかもしれません。

ただ、気になるその3年半という期間が時間に直すとどのくらいの時間になるのかということについては、時間数を正確に調査している訳ではないと言うことで換算はできないということでした。
4、5才の子どもと小学生、中学生などの違い、英語が街にあふれている環境と教室やテレビ・インターネットに英語の使用が基本的に限られている日本のような環境との違いはありますが、このように第二言語習得に影響を与えるのは、インプットかアウトプットか(インターラクションという議論はありませんでしたが)という議論は重要だと思います。

それ以上にどのくらいの期間が必要なのかという年数を概算することはある意味では応用言語学の使命に合っていると思います。

累積ということですので、もしこれを今後時間数に直せばどのくらいの「時間」英語に触れれば英語の基本的能力が身につくのかという謎への回答が今後得られる基礎になると思います。

時間なのか、開始時期なのか、インプットなのか、アウトプットなのか、その組み合わせなのか。移民を対象としたこれまでの研究では移民してきた時期(Age of Onset)が重要な意味を持つことが示唆されています。

日本人は従来6年間も英語を学んできたのにと言われますが、このC先生の研究と異なり毎日英語にどっぷり浸かっている(language bath)ではなくちびちび (drip feed)で英語の授業があったのみです。特に、Exposureとなると1000時間どころか、その1/10もないのではないでしょうか。その意味でも学習年齢や環境を超え、日本人の英語能力を考える際この研究重要な意味を持つものと思います。

(2018.11.15)

★今回の教訓:Cumulative exposure to English、一度これまで何時間英語に触れたのか考えてみるといいだろう。

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オックスフォード通信(232)オックスフォード大学が世界一の秘密(12):iSkills

はじめてITセンター主宰の3時間ワークショップに参加してきました

これまで数多くのワークショップに参加してきましたが、オックスフォード大学ITセンター主宰のものは初めてです。本日はレフェレンスの作成ソフトについてです。

私自身はEndNoteというソフトをトロント時代からですのでもうかれこれ19年くらい使っているのですが、高機能で使いやすい反面、高価であるため学生にお勧めできないという難点をかかえてきました。

このITセンターのワークショップは有料(私のようなAcademic Visitorは £20、学生・院生はその半額)なのが他のワークショップと異なるところです。

出席者は職員、教員、私のような客員研究員、学部生、院生です。私の横にすわっていたWさんは大学院生と言っていました。

最初の代表的な4つのレフェレンスの作成ソフト(Endnote、RefWorks, MENDELEY, Zotero)の概要の紹介の後、それぞれのソフトが入った5つのブースに参加者が別れて、好きなソフトを試してみる、試し方については指示書がおいてあり自分で進めてゆき、分からない所があれば手を挙げるとメインの指導者+3名のインストラクターがサポートしてくれる(教えてくれる)という流れでした。

インストラクターは慣れている様子で、流れるように進むのですが、約20名ほどの受講者のレベルがバラバラで特に超初心者の少し高齢の女性がメインのインストラクターをほぼ30分くらい独占してしまっていました。とはいえ、残りの参加者はテキパキしていたため大きな問題にはなりませんでした。ただ、何事もそうですが最初の出だしがなかなかうまくいかないもので手を挙げてもなかなかサポートしてもらえないという状況が最初の30分ほどは続きました。

iSkillsと称する(iSeminarに似た感じがしますが)今回の3時間足らずのワークショップでほぼレフェレンスソフトの概略はつかめたように思います。感じたのはこのソフト群が優れている以上にオックスフォード大学のライブラリーの検索がこのようなレフェレンスソフトに対応していて、いちいちレフェレンスを自分で打ち込まなくていいように連携ができている点です。

またMENDELEYに代表されるようにクラウドとデスクトップの連携が上手くできるのは便利だと思います。実際にレフェレンスを探すのは自宅ではなくて大学などの出先であることが多くあります。

大学が研究を主眼として、レフェレンスソフトを念頭にライブラリーの検索システムを構築してゆく。あくまでも教員、研究者、院生、学生が使いやすいようにシステム構築をしその普及のためのワークショップを有料ではあるけれど提供する、このあたりの Researcher Friendly な環境こそが多くの優れた論文がオックスフォード大学から産み出される秘密なのかもしれません。

早速、このiSkillsの知見を現在卒論を書いているiSeminarのメンバーに還元したいと思います。

(2018.11.14)

★今回の教訓:時代は進化している。

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