二日連続で興味深いセミナーに参加してきました
ポーランド語と英語のバイリンガルの双子(LIとTD、二卵性:dizygotic)を対象としてコミュニケーション能力の発達を縦断的に研究した博士論文を元にした発表でした。二卵性ということもありますが、BiとTDの2言語の発達が異なっていること(主としてTDが上回っている)をベースにしながら、LIが時間の経過とともにどのように二言語を発達させてきたのかについて報告されていました。
質問にもあったのですが、このような子どもを研究対象として見つけることはなかなか難しいことですが、その幸運も研究成果のひとつだと思います。またこの発表の中で、力説された「コミュニケーション能力とは何か」という点には興味を覚えました。
Dynamic Model of Communicative Abilityと称されるモデルでは、従来型のLinguistic, Discourse, Sociocultural, Strategicの4つの要素に加え、Monitoring, Interactionalという2つの新たな構成要素も含めそれらが相互に関連し合っているというものです。
その背景には、近年注目されているComplex Dynamic Systems Theoryがあります。バタフライ・イフェクトに象徴されるように、時間の経過とともに言語発達は混沌とした姿を見せます。一方、スタート時の影響や環境との相互作用も議論に含まれます。
この発表を聞きながら、言語発達は一様に何かの影響であると断言するよりも多様な要因の相互作用によって生まれてくるものだというその総合性に目を向ける必要があると思いました。一方、そうはいいながらも複雑な言語発達をある一定の視点や構成要素によって分析的に検討する必要性もあると思います。
二卵性双子という場合、遺伝子としては50%の共通性しかないわけですので、言語発達への遺伝的要因の影響は無視できません。しかし、同じ親であるため、SES (Socioeconomic Status)は同じであり、言語環境もほぼ同一のものが用意されます。複雑な要因のかなりの部分が統制できるところが双子研究の面白いところかもしれません。特にコミュニケーション能力の発達には、周囲の大人(家族、親戚)とのインターラクションが影響してくることを考えると環境をコントロールして研究を行うことは重要です。双子という偶然出現したこどもによって言語発達の秘密に光があてられることは興味深いところです。
(2018.11.21)
★今回の教訓:私の子ども達も双子。この研究対象の二人と同様二卵性であり、同様にその能力の相似性と相違性が見られる。