オックスフォード通信(358/07)Enlightment

認知言語学者として著名なスティーブン・ピンカー教授の講演会に行ってきました

スティーブン・ピンカーはハーバード大学教授でノームチョムスキーの後継者と目されている著名言語学者ですが、近著は「悟り」とも訳せる、Enlightment というタイトルの本です。たまたまBlackwell(書店)で事前に本を買っていたのでパラパラと見ていたのですが、トピックは多岐に渡り、時代も過去200-300年と遡りながら統計的データを元にして論じています。

簡単に言うと、時代と共に、人類は進化しているし、幸せになっているというものです。

講演会とは銘打ってありますが、オックスフォード大学の教授が聞き役になり、その質問にピンカー教授が答えてゆくというものでした。

人類が進化しているという点については、質疑応答のコーナーで、シリア出身という男性がそのように思えないと述べていましたが、個々人や個々の国と人類全体というレベルで議論するとその結論は異なってくるのかもしれません。

それ以上にピンカー教授が言語学からこのような、何とまとめるとよいか分からない領域に足を踏み出していることに興味を覚えます。チョムスキーが政治の領域で多くの議論をしていることとよく似ています。恐らく、これまでの領域では自分の研究課題を全て解決してしまったということなんでしょう。応用言語学者のドルネイが近年、神学で博士号を取得したこともよく似た話に8なるかもしれません。

いずれにせよ、個々人や個々の地域や国というレベルで考えるとなかなか人類の進化を実感できないのですが、統計が間違っていないとしても、また統計データの読み方が適切であるとしても、昔では考えることのできなかった悲惨な事件が多く起きていることはどう読み解けばいいのでしょう。

恐らくそれらを表す指標自体がまだないのかもしれません。また比較の対象を巨視的だけでなく近視眼的にすることも必要なんでしょう。

ただピンカー教授が主張するように、人類は悲惨な戦争や事件を乗り越えながらも、全体として進化しようとしているのは事実だと思います。それは教育の効果、インターネットによる情報の瞬時による伝達ということもありますが、根源的にはそれぞれよりよい生活を目指して努力するヒトという動物の中に埋め込まれたDNAのせいかもしれません。

教育の役割は?個々人の努力の必要は?神の存在は?などいろいろな点についていいヒントを得たと思います。

★今回の教訓:講演会のあと、サイン会があった。あれだけの世界的に著名な学者でありながら気さくにサインに応じているところに人間的魅力をみるけることができる。もちろん、並ばさせて頂きました。

(2019.3.20)

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