人生が二度あれば

井上陽水というフォークシンガーの歌に「人生が二度あれば」というものがあります。陽水は今も現役で活躍していますので知っている人は多いと思いますが、歌自体を知っている人はここにおられる先生方をのぞけばほとんどいらっしゃらないでしょう。

さて、その「人生が二度あれば」ということですが、みなさんは人生を振り返るにはまだまだ早いのでこの話題自体が無縁のものであるかもしれません。

私の大学時代のある先生に、あるコンパの席上、こんな話を聞いたことがあります。

あ る年代までは人生を足し算として加算しながら考えるけれど、ある年代を過ぎると、自分が死ぬであろう年を起点として引き算をしながら考える。つまり、あと 何年生きられるから生きている内にこれだけはしておこうと考えるわけです。または、定年まであと何年だから、という発想です。大学の教師として今年11年 目を迎える私にとってもまだまだこの引き算的発想は無縁のもので、足し算をしながら人生を送っていますが、時々、陽水の歌のように「人生をもういちどやり 直すなら、どこから?」と思うことがあります。これは今の人生に後悔をしているわけではなく、単純に思うだけです。

今 の30代、40代の人達にこの同じ質問、「人生をもう一度生きるならどこから?」と聞くと、大卒の人ならほとんどが大学時代からと答えるのではないでしょ うか。大学時代ほど、人生の中で光り輝き、後から振り返って、「あの時ほど楽しい時はなかった」といえる時代はありません。

なぜでしょうか?

健 康面でも若くて元気であることはあるでしょう。また、新たな知識やスキルを身につけて自分の新たな可能性を発見するからかもしれません。サークルやクラブ に入ってる人はその活動が楽しかったというでしょう。また、高校までの学習と異なり、自分の興味にあわせて自分で考えて学習をするからかもしれません。大 学の授業は出席することがもちろん前提ですが、高校と異なり、時に授業をさぼって映画に出かけても誰も文句を言いません。自分でその責任を取ればいいだけ です。大学時代がなぜ人生の中でいちばん楽しいのか、それはこれからみなさんがこの同志社女子大学で学ぶなかで考えていただきたいと思いますが、その基 本、基盤をなすものは何であるか、という点について理解しておく必要があります。「大学生活の基本、基盤とは何か?」

それは、大学案内にも大学の講義要録(シラバス)にも書かれていませんが最も重要なことです。そして、誰もが暗黙の前提として知っていることです。

実はそれは、先ほど、朗読していただいた聖書に書いてあります。

「私はぶどうの木、あなたがたはその枝である。人が私につながっており、わたしもその人につながっていれば、その人は豊かに実をむすぶ」

葡 萄の木=英語でいうところのVine 、これこそが大学生活のキーワードです。このキーワード・Vineはこの大学でよく目にします。例えば、大学の広報誌の題名はVineですし、川田先生や Susser、中村先生が中心にお作りになった遠隔地学習システムの名前は「Cyber-Vine」です。

す なわち、みなさんは葡萄の木の一房一房、また一粒一粒であり、なんらかの形でお互いに結びつき、つながっているのです。このお互いの結ぶつき、関わり合い を認識し、強いものにすることこそ、みなさんの大学生活をより豊かにそしてあとから振り返って「もういちど大学時代に戻りたい」と言わしめるものであると 思います。

私自身の大学生活を振り返っても、入学式の当日、名簿の関 係でたまたま横に座った吉田という同じ新入生と「こんにちは、どこから?」というあいさつが縁でもう20年以上も友人関係が続いています。その吉田君抜き に私の大学生活は考えられないくらい様々な活動を一緒にしました。新しいサークルも立ち上げました。さまざまな旅行も計画したし、夜を徹して様々な話をし ました。彼とまた彼らと話しをしたことが今の私に大きな影響を与えてくれています。

友 達にどうやってなるか、その方法は実に多様です。もうすでに、この1泊2日の フレッシュマンキャンプを機に、多くの新たな友達を得た人も多いと思います。しかし、これからの大学生活の中でも友人を増やす機会は、通常の授業や雑談に 加え、特にこの情報メディア学科には多くあります。授業外の長時間にわたる作業、さまざまなプロジェクトなどなど、大学に滞在する時間が他学科に比べて格 段に多いみなさんにはまさに新たな友人を得るチャンスに恵まれているといえるでしょう。それは単にこの情報メディア学科3期生だけにとどまらず、先輩や諸 先生、MSCのスタッフ、職員の方々も含まれます。

このお互いの結びつき、つながり、ネットワークというものは、大学教育の目的ではないが、結果として最も重要な産物であります。

大学時代に身につけた知識はいずれ新たな知識によって更新、上書きされていきます。同じ知識がいつまでも有効であるとは限りません。しかし、ここで得た友人、友達との結びつき、ネットワークは時代が変わっても、消滅することはありません。

「友情に始まりはあってもおわりはない」

これは真実です。

広く、多様な人間のネットワークはあなた方ひとりひとりの大学生活を豊かに実り多いものにしてくれます。どうぞ、肩の力を抜いて、少し心をひらいて笑顔でお互いに接してみましょう。すぐに友人になれると思います。

「友情に始まりはあってもおわりはない」

みなさんのこれらからの4年間が実り多いものであることを祈念して、閉会礼拝のお話とさせていただきます。

(2004年度情報メディア学科新歓オリエンテーション閉会礼拝での話から)

(2004. 4. 5)

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